家庭菜園を始めた頃、私は毎日同じことをしていました。
朝起きると、プランターの前へ行き、土をじっと見つめるのです。
「本当に芽が出るのかな…」
種をまいたのは自分ですが、半分は不安でした。
テレビでは、農家さんが立派な野菜を育てています。
土づくりの方法。
肥料をまく時期。
水やりのコツ。
勉強になることばかりでしたが、知識が増えるほど、「うちの種は大丈夫かな」と心配になるのです。
毎朝、プランターをのぞき込み、「まだかな、まだかな」と待っていました。
正直に言うと、私は気長に待つのが苦手です。
でも、野菜は人間の都合では育ちません。
ある朝、いつものように土を見ていると、小さな緑色の双葉が顔を出していました。
「やっと出た!」
思わず声が出ました。
その小さな芽が、本当に愛おしく感じたのです。
それからは、毎日の水やりがもっと楽しくなりました。
朝と夕方、たっぷり水をあげます。
葉っぱが少しずつ増え、茎も太くなっていきました。
そして、ある日、苗の先端に小さな花芽を見つけました。
「えっ、もう花が咲くの?」
驚きと同時に、胸がじんわり温かくなりました。
さらに数日後、黄色い小さな花が開いたのです。
たった一輪の小さな花です。
でも、その花を見た瞬間、「水やりと肥料のかいがあったなあ」と心から思いました。
退職してから、私は何となく時間を過ごしていました。
新聞を読み、テレビを見て、一日が終わる。
そんな日もありました。
でも、家庭菜園を始めてから、毎日に「楽しみ」ができました。
今日は葉っぱが増えた。
今日は茎が伸びた。
そして今日は、花が咲いた。
その小さな変化が、私の心を元気にしてくれるのです。
私は、この花を見ながら、「やっと見つけた、退職後の楽しみかもしれない」と思いました。
大きな趣味ではありません。
お金もあまりかかりません。
でも、土に触れ、野菜の成長を見守る時間は、私にとって大切な心のよりどころになっています。
家庭菜園は、結果を急いではいけないことも教えてくれました。
芽が出るまで待つ。
花が咲くまで待つ。
そして、実がつくまで待つ。
その時間も、家庭菜園の楽しみの一つなのですね。
これから、トマトやピーマンにどんな実がつくのか、今から楽しみです。
毎朝プランターを見るたびに、「今日も元気に育っているかな」と声をかけています。
小さな花が咲いたあの日、私は改めて思いました。
「続けてきて良かった。」
そして、「これからも、野菜たちと一緒に、ゆっくり歳を重ねていこう」と思っています。
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次回予告
【第4話】初めて実がついた日。赤く色づくのを待つ毎日が、こんなに楽しいなんて。
黄色い花が咲いたあと、小さな実が姿を見せてくれました。
まだ青くて小さい実ですが、毎日見るのが楽しみです。
次回は、「実がついた瞬間の感動」と、「赤く色づくのを待つ時間の楽しさ」をお話しします。