家庭菜園を始めてから、私の日課が一つ増えました。
朝起きると、まずプランターの様子を見に行くことです。
「葉っぱは元気かな。」
「土は乾いていないかな。」
そんなことを確認しながら、水をたっぷりあげます。
夕方になると、もう一度様子を見に行きます。
すると、ほんの少しだけ苗が大きくなっているように見えることがあります。
その小さな変化が、今の私にはとても楽しみです。
しかし、種から育てるものは、そう簡単にはいきません。
種をまいてから数日たっても、土の表面は静かなままです。
「本当に芽が出るのかな。」
「失敗したのかな。」
心配になって、毎日のように土をのぞき込んでしまいます。
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私は暇な時間に、テレビで野菜づくりの番組を見るようになりました。
農家さんが、土づくりの方法を説明してくれます。
肥料をまく時期や、水やりのコツも教えてくれます。
「なるほど、そうやるのか。」
と勉強になることばかりです。
でも、不思議なもので、知識が増えるほど、「早く芽が出てほしい」という気持ちが強くなってしまうのです。
毎朝、プランターの前でしゃがみ込み、土をじっと見つめます。
「まだかな。」
「今日こそ出ているかな。」
まるで子どもが宝探しをしているような気分です。
ところが、野菜は人間の思うようには育ちません。
急かしても、芽は早く出ません。
毎日少しずつ、土の中で根を伸ばし、自分のタイミングで顔を出すのです。
そのことに気づいた時、私は「待つことの大切さ」を教えられているような気がしました。
若い頃の私は、何でも早く結果を求めていました。
仕事でも、「すぐに成果を出したい」と思っていました。
でも、年齢を重ねると、人生には「待つ時間」があることが分かってきます。
子どもの成長もそうです。
孫の成長もそうです。
そして、自分自身の心も、ゆっくり変わっていくのだと思います。
家庭菜園は、そのことを毎日教えてくれます。
芽が出るまで待つ。
花が咲くまで待つ。
実が赤くなるまで待つ。
その時間の中で、私は焦る気持ちを少しずつ手放せるようになりました。
もちろん、今でも毎日土をのぞき込みます。
「まだかな」と思います。
気長に待てない性格は、なかなか変わりません。
でも、それでいいのかもしれません。
待ちながら楽しみにする。
その気持ちがあるからこそ、芽が出た時の喜びが大きいのだと思います。
ある朝、小さな緑の芽を見つけた時は、本当にうれしくなりました。
「やっと出てきてくれた。」
思わず声をかけてしまったほどです。
たった一つの小さな芽でしたが、その姿は私に元気を与えてくれました。
家庭菜園は、野菜を育てる趣味だと思って始めました。
でも今は、それだけではないと感じています。
土に触れること。
季節を感じること。
そして、待つことを覚えること。
それらすべてが、心を落ち着かせ、毎日を豊かにしてくれているのです。
これからも、焦らず、野菜たちのペースに合わせながら、家庭菜園を楽しんでいきたいと思います。
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