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【第5話】高齢者の防災、忘れてはいけない「薬」と「持病」

災害が起きたとき、高齢者にとって何が一番心配でしょうか。

水。

食料。

停電。

断水。

もちろん、どれも大切です。

しかし、毎日薬を飲んでいる人にとっては、**「薬をどうするか」**も大きな問題です。

地震で自宅が倒壊したら、薬を探しに戻ることはできません。

水害で家の中が水につかったら、薬が濡れてしまうこともあります。

さらに、避難先が遠くなれば、いつもの病院や薬局へ行くことも難しくなります。

だからこそ、私は普段から薬についても防災を考えておきたいと思っています。

薬は「どこにあるか」が分かるように

普段飲んでいる薬を、薬箱の奥や引き出しの中にしまっている人もいると思います。

もちろん、薬は適切な方法で保管することが大切です。

そのうえで、災害時に必要な薬を探せるよう、保管場所を家族にも分かるようにしておくと安心です。

「薬はここにあります」

と家族に伝えておく。

それだけでも、いざというときに役立ちます。

特に一人暮らしの高齢者の場合は、自分が薬のことを説明できない状況も考えておく必要があります。

薬袋を見て分かるようにしておく

私は、薬について、

「この薬は何のため?」

「朝だったかな?」

「昼も飲むのかな?」

と迷わないようにしておきたいと思います。

薬袋などには、医師や薬剤師から示された服用方法をもとに、

朝・昼・夜に何錠飲むのか

が分かるように整理しておくと、本人だけでなく、家族や支援してくれる人にも伝わりやすくなります。

ただし、ここで大切なことがあります。

薬の飲む量や回数を、自分の判断で変更してはいけません。

薬袋に書かれている内容と違うことを勝手に書き足したり、薬を減らしたりするのではなく、分からないことがあれば医師や薬剤師に確認しましょう。

「誰が見ても分かるようにする」

ことと、

「勝手に薬の内容を変更する」

ことは、まったく違います。

お薬手帳は必ず一緒に

そして、薬の備えで忘れてはいけないのが、

お薬手帳です。

私は、災害時には薬とお薬手帳をセットで考えたいと思っています。

避難するときに、

「薬は持ったけど、お薬手帳を忘れた」

ということにならないようにしたいものです。

お薬手帳には、普段使用している薬の情報が記録されています。

災害によって薬を失った場合などには、医師や薬剤師に自分の薬について伝えるための大切な手がかりになります。

ですから、

薬の保管場所と、お薬手帳の場所を家族にも伝えておく。

これも大切な防災です。

「薬の名前」が分からなくても大丈夫なように

災害時には、本人が落ち着いて薬の説明をできるとは限りません。

避難生活で疲れているかもしれません。

家が壊れてショックを受けているかもしれません。

高齢者の場合、家族とはぐれてしまう可能性もあります。

そんなとき、

「この薬を飲んでいます」

と薬の名前を正確に説明するのが難しいこともあります。

だからこそ、

お薬手帳を持っていることが大切なのです。

さらに、家族にも、

「私は毎日薬を飲んでいる」

「お薬手帳はここにある」

「かかりつけの病院はここ」

ということを伝えておくと安心です。

持病についても家族に伝えておく

薬だけではありません。

自分にどんな持病があるのか。

どこの病院へ通っているのか。

どの薬を飲んでいるのか。

アレルギーなど、医療者に伝えておきたいことはないか。

こうした情報も、家族と共有しておきたいものです。

普段は当たり前のことでも、災害時には重要な情報になります。

防災バッグに入れておきたいもの

高齢者の防災バッグを確認するときは、一般的な防災用品だけでなく、自分の体に必要なものも確認したいですね。

例えば、

  • お薬手帳
  • 必要な薬
  • 眼鏡
  • 補聴器など普段使っているもの
  • 病院の診察券
  • 家族の連絡先
  • かかりつけ病院・薬局の情報

などです。

もちろん、薬の保管方法や持ち出し方は、薬の種類によって違います。

薬剤師に、

「災害が起きたとき、この薬はどう保管・持ち出せばいいですか?」

と普段から聞いておくのもよいでしょう。

「自分だけが分かる」では不十分

私は高齢者になって、防災について考える中で、こんなことを思うようになりました。

「自分だけが分かっているのでは、災害時には足りない」

ということです。

普段なら、自分で薬を管理できます。

しかし、災害時には、自分が動けなくなることもあります。

家族に薬を探してもらうこともあるでしょう。

避難先で医師や薬剤師に相談することもあるでしょう。

だから、

「自分の薬について、他の人にも分かるようにしておく」

ことが大切なのです。

高齢者の防災は「命の情報」を準備すること

災害への備えというと、どうしても物を準備することばかり考えてしまいます。

水を買う。

非常食を買う。

懐中電灯を用意する。

防災リュックを作る。

もちろん、それも必要です。

でも、高齢者の場合は、

薬・持病・病院・お薬手帳

も大切な「命の情報」です。

これらを普段から整理しておく。

家族にも伝えておく。

避難するときには、お薬手帳を忘れない。

そして、薬について分からないことがあれば、医師や薬剤師に相談する。

こうした小さな準備が、災害時の安心につながるのだと思います。

おわりに

災害は、いつ起こるか分かりません。

だからこそ、元気な今のうちに準備しておく。

薬はどこにあるのか。

お薬手帳はどこにあるのか。

かかりつけ病院はどこなのか。

薬局はどこなのか。

家族は、私の薬のことを知っているのか。

一度、確認してみませんか。

「薬を準備する」だけではなく、「薬の情報を伝えられるようにする」。

これも、高齢者の命を守る防災だと思います。

そして、もし災害が起きたときに薬を失ったり、飲み方が分からなくなったりした場合は、自己判断で対応せず、避難先の医療機関や薬局、医師・薬剤師などに相談することが大切です。

自分の体を守るために。

今日できる小さな備えから始めてみたいと思います。

m3.com薬剤師