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【第3話】災害時、薬はどうする?高齢者が今から備えておきたいこと

地震や水害などの災害が起きたとき、私たちはまず「命を守ること」を考えます。

安全な場所へ避難する。

家族の無事を確認する。

水や食料を確保する。

どれも大切なことです。

しかし、高齢者になって私が考えるようになったのは、

「毎日飲んでいる薬は、どうするのだろう?」

ということです。

これは、持病がある高齢者にとって、とても大切な問題だと思います。

避難したあと、自宅へ戻れるとは限らない

地震が起きると、まず避難所へ向かう人もいるでしょう。

そして、一夜明けたら、

「自宅に必要なものを取りに戻ろう」

と思うかもしれません。

でも、自宅が無事とは限りません。

家が倒壊していれば、中へ入ることは危険です。

薬を取りに戻ることもできません。

高齢者にとって、毎日飲んでいる薬が自宅にある場合、これは大きな不安になります。

水害なら薬が流されることもある

地震だけではありません。

大雨や洪水などの水害もあります。

水が自宅の中まで入れば、薬が水につかったり、流されたりする可能性があります。

さらに、泥やヘドロにまみれた薬は、当然ながら「そのまま飲めばいい」とは考えられません。

薬を失った場合は、自己判断で飲み続けたり、別の薬で代用したりせず、医師や薬剤師に相談することが大切です。

自宅がなくなったら、病院にも行けない

さらに大きな問題があります。

もし、自宅が倒壊して住めなくなったら、どこで生活するでしょうか。

親戚の家に一時的に身を寄せる人もいるでしょう。

場合によっては、県外の親戚の家へ避難することもあります。

そうなると、

「いつもの病院へ通う」

という、これまで当たり前だった生活ができなくなります。

病院が遠くなれば、通院するだけでも大変です。

特に高齢者で足が不自由な場合は、なおさらです。

私の母も薬局へ行くのに苦労した

私の母は足が不自由でした。

普段なら、病院へ行き、処方せんをもらい、薬局へ行けば薬を受け取れます。

しかし、災害などで生活する場所が変わった場合、それが簡単ではありません。

病院へ行く。

処方せんをもらう。

薬局を探す。

薬局まで行く。

高齢者にとっては、一つ一つが大きな負担になります。

特に、足が不自由な人にとって「薬局まで行く」という最後の部分が大きな問題になります。

「薬は処方されたから大丈夫」

ではありません。

「誰が薬局まで取りに行くのか」

ここまで考えておく必要があるのだと思います。

薬を受け取る「足」も考えておく

災害時の備えというと、水や食料に目が行きます。

しかし、薬を必要とする高齢者の場合、

「薬を受け取るための移動手段」

も重要です。

自分で歩ける人ならいいでしょう。

でも、足が不自由な人はどうでしょうか。

車が使えない場合はどうでしょうか。

公共交通機関が止まっていたらどうでしょうか。

家族が遠くに住んでいたらどうでしょうか。

そこで、元気なうちに家族と話しておきたいと思います。

「もし災害で薬がなくなったら、誰に連絡する?」

「薬局へ行けないときは、誰に相談する?」

こうした話をしておくだけでも違います。

お薬手帳は、必ず確認しておきたい

災害時に役立つものの一つが、お薬手帳です。

普段どんな薬を飲んでいるのかを医師や薬剤師に伝えるための大切な情報になります。

厚生労働省も、災害時に薬を失った慢性疾患の患者について、お薬手帳などから服薬内容が確認できる場合の対応を示しています。

また、現在は電子処方せんやマイナポータルなどを利用して、薬剤情報を確認できる仕組みも整備されています。災害時には、一定の条件のもとで医療機関や薬局が薬剤情報を確認できる仕組みもあります。

ただし、

「電子情報があるから紙のお薬手帳はいらない」

ということではありません。

厚生労働省も、電子処方せんなどでは確認できない情報があるため、引き続きお薬手帳も必要としています。

紙のお薬手帳と、利用できる電子的な情報。

両方を確認しておくと安心です。

家族にも薬の情報を伝えておく

高齢者本人だけでなく、家族にも伝えておきたいことがあります。

例えば、

・どんな薬を飲んでいるか
・どこの病院に通っているか
・かかりつけの薬局はどこか
・お薬手帳をどこに置いているか
・災害時の連絡先

などです。

家族がこうした情報を知っていれば、本人が薬の名前を思い出せない場合でも、医療機関や薬局へ相談しやすくなります。

「薬がなくなったらどうする?」を今考える

私は、今回のことを考えて、

「薬は、ただ家に置いておけばいいものではない」

と思いました。

大切なのは、

「薬を失ったとき、どうするか」

まで考えておくことです。

自宅に取りに戻れない。

病院へ行けない。

薬局まで行けない。

家族も近くにいない。

そんな状況も想定しておく。

そして、困ったときは、避難先の医療機関や薬局、自治体などに相談する。

災害時には、被災状況に応じて通常とは異なる医療・薬の対応が行われることがあります。

高齢者の防災は「薬を受け取るところ」まで

防災を考えるとき、

「防災リュックを準備しました」

だけではなく、

「薬がなくなったら、どうやって薬を手に入れる?」

まで考えておく。

私は、これが高齢者の防災には必要だと思います。

特に、足が不自由な方や、一人暮らしの方は、家族や近所の人など、いざというときに相談できる相手を決めておくことも大切です。

おわりに

災害は、私たちの生活を一瞬で変えてしまいます。

自宅が倒壊する。

水害で家の中が水につかる。

病院へ行けなくなる。

いつもの薬局にも行けなくなる。

そんなことが現実に起こるかもしれません。

だからこそ、元気な今のうちに考えておきたい。

「私の薬は、災害が起きたらどうなる?」

そして、

「薬がなくなったとき、私は誰に助けを求める?」

この二つを家族と話しておくだけでも、備えになります。

私の母が薬局へ行くことに苦労した経験からも、私は強く感じています。

高齢者の防災は、

「薬を準備する」だけではありません。

「薬を必要な場所まで届ける方法を考える」ことも、防災です。

命を守るために、できることから一つずつ準備しておきたいものです。

※災害時の薬の扱いは、災害の状況や地域、薬の種類などによって異なります。薬を自己判断で中止・変更せず、医師・薬剤師や避難先の医療機関に相談してください。